ちきりんさんの記事「2012-11-21 大手チェーンの底力を見たですよ!」の中に書かれていたことを読んで、当たり前のことかもしれませんがたしかになぁと思いました。

日本の外食産業は市場規模 20兆円と言われてて、全体としては必ずしも成長産業ではありません。でもその中身をみれば、他の産業と同様、「個人店が減り、大手チェーンがシェアを伸ばす」という産業構造の変化が起こりつつあります。

また、タイミング良く、昨日は「業界のリーダーが語ったeコマースのトレンドと戦略 まとめ」という記事を読んでいて、「Amazon(大手)といかに戦わないで、生き残るためにはどうすればいいか」ということをみんなやっぱり考えているんだなぁと思っていました。

eコマースを成功させるには8つ方法がある:
1. Amazonが取り扱ってない商品を売る(Fab商品の90%はAmazonが扱っていない)
2. Amazonとの競争を避けるためには、買いたいものが明確に決まっていない人の購買意欲を高めることが重要なので「ディスカバリーエンジン」提供する(顧客の興味のありそうな情報を表示して潜在ニーズを掘り起こす)。Amazonは、欲しいものが何かわかっている人に商品を販売している


僕もECに関わる仕事をしているため「Amazonといかに戦わないか」「楽天といかに戦わないか」をずっと考えています。
特に2011年以降は、Amazonも楽天も一気に低価格競争に入って、価格ではほぼ勝てない状況になっています。

これは、そういえば、「個人店が減り、大手チェーンがシェアを伸ばす」ということと同じ現象なのかと思い、この先がどうなるのかは、他業界の事例を学んでいけば、将来をなんとなく予測できるのかなと思いました。

なので、この記事を書きながら、ECがこの先どうなるのかを考えてみます。


■イオンと地方商店街
・イオンが地方に超大型店舗を出店して、商店街の客をどんどん奪っている
・商店街のお店がイオンに出店しようと思ってもテナント料が高く出店が難しい
・イオンに出店しているお店は全国的も名前が知れているような有名店が多い
・商店街は地域活性化を掲げて再復興を目指しているがあまりうまくいっている話は聞かない
・比較的、生き残ることができている商店街のお店はコアな顧客をつかむことができているところ
・学校指定の制服/学ラン屋さんは商店街でまだシャッターを閉めずに残ってそう(毎年確実に大量の注文がある。ただし、イオンがここに手を伸ばしたらなくなるかも。現にランドセルはイオンで売れてそう)
・同じ趣向の人が集まるコミュニティとしても機能している服屋もまだ残ってそう

■セブンイレブンと地方商店街
・家の近所にセブンイレブンが出店して、商店街の客をどんどん奪っている
・品ぞろえが良いので商店街に行かなくても必要なものがだいたい揃う
・サービス充実(宅配便の集荷預かり、光熱費支払い、ATM設置など)によってセブンイレブンに行く機会が増えている
・価格はチェーンで統制されているので、商店街のお店が値引き販売をしていれば、商店街の方が安く買えることもある

■ドトールと個人喫茶店
・ドトールが個人喫茶店の近所にも出店して、個人喫茶店の客をどんどん奪っている
・個人喫茶店に昔から通っているファンはドトールには流れずに継続して通っていそう
・ちょっと一休みしたいな、どこか打ち合わせができるところがないかな、という人は個人喫茶店よりもドトールを選びそう


地方商店街、個人零細店は「目玉商品を作る」「キャンペーンをする」ことで延命することはできそうですが、上昇傾向に持っていくことはだいぶ難しそうです。

延命をするとなると、次に問題になるのは、経営者が入れ替わるときです。
今の経営者が高齢になることで働くことが難しくなり、新しい経営者に入れ替わるときは絶対にきます。
そのときに新しく引き継ぐ経営者が見つからずにお店をたたんでしまう、という話はよくありそうです。

今の経営者が高齢になって引退するまでいかに逃げきれるかが、地方商店街、個人零細店での大きな課題になっていそうな気がします。
※もちろん個別ケースで見ていけば、「都会で物理的に広い土地がなく、イオンが近くにできることはほぼないため大丈夫」という商店街、個人零細店もたくさんあるとは思いますが。


話が戻って、ECの場合。
Amazon、楽天の力はどんどん強くなり、売上を伸ばしています。

結論は2つの選択肢かなぁと思います。

1つ目の選択肢は、大手チェーン(Amazon、楽天)の中に入ってしまうこと。
※Amazon、楽天を”チェーン”と呼ぶことには少し違和感があるかもしれませんが、ひとまずここでは大手チェーンと呼びます
利益率は低くなってしまうし、結局Amazon内、楽天内での競争に巻き込まれてしまうことにはなりますが、ひとまずモノは売れます。
モノが売れると嬉しいので、利益率が低くてもがんばれます。
ほとんどのお店はなんとかギリギリの利益、もしくは赤字のなかで運営しながら、モノを売り続けることになると思いますが、そのうちのほんの少しのお店はうまく立ちまわってぼちぼちの利益を出すことができそうです。

2つ目の選択肢は、ファンを囲い込むお店を運営すること。
商品を購入する決め手となる特に大きな要素が「価格」であることは明らかですが、そうではない要素で商品を購入するお店を選ぶ人も少し存在しています。
そういう人を囲い込んで、お店のファンになってもらうことです。「価格」では大手に勝てません。
お店と消費者が共通点を持つ[趣向の一致]こと、お店を中心としたコミュニティを作ることかなぁと思います。

とはいえ、今がんばって延命をしているお店がいきなり明日から「ファンを囲い込んだお店になる!」というのは現実的ではないので、Amazonや楽天に出店して延命しつつ、独自ショップでファンを作ることを地道に続けていく、ことが実際の打ち手かなと思います。
独自ショップでファンを作って、「ある程度ファンができて売上が立ってきたな」と感じるまでは少なくても2〜3年はかかると思います。そこまで延命しつつがんばることができれば、さらにもうしばらくはファンのおかげで生き残っていけそうです。


ECは実店舗と比べて、高い家賃がないので固定費を安く抑えることができます。
そのため、ネットショップ自体は存在しているがほぼ開店休業状態というお店はこれからもどんどん増えそうです。無料でネットショップを作ることができるようなサービスもどんどん生まれていますし。

ただし、「月に数万円から数十万円売れればOK」「毎月じゃなくてもたまに売れればOK」と考えている個人ネットショップは多そうなので、それはそれでいいのかもしれません。月に数万円から数十万円ならAmazon、楽天がいても「数人のファンがいる」「Amazon、楽天にはない商品を売る」「Amazon、楽天が力を入れていないキーワードでSEO/PPCをする」ことでどうにかなると思います。
こういう月に数十万円のネットショップをいくつも持てばそれで数百万円の売上を確保することも目指せます。

あ、これが3つ目の選択肢と言えるかもしれません。


「大手チェーン(Amazon、楽天)の中に入ってしまうこと」
「ファンを囲い込むお店を運営すること」
「月に数万円から数十万円売れるお店をいくつも持つこと」

この3つをそれぞれ組み合わせたり、組み合わせなかったりしながら、バランスを取って運営していくことが、ネットでの個人店の生き残り方になりそうです。(もしくは、もう既にそうなっている)