獲得件数とCPAはわかりやすい指標だけど
「新規申込を月間100件獲得する、CPA2000円以内で」というのは多くのWebマーケッターの目標値になっています。Google広告を運用して、アフィリエイト広告を運用して、アドネットワークを運用して、どうにか達成を目指す、と。
広告運用を主戦場とせず、SEOで集客しているケースも同じです。新規で作ることができるページ数、改善できるページ数は限られているので、それらの範囲内で作業をして、月間100件獲得を目指す。
とてもわかりやすい指標ですし、獲得件数とCPAにこだわって運用するべきですが、視野が狭くなりすぎないように気をつける必要があります。
- 流入クエリを見直す
- 狙ったクエリでより多くの流入を作る
- クリエイティブを見直す
- 流入後のCVRを向上させる
テクニカルなノウハウは移り変わっていきますし、際限がありません。追い込まれていき、プラットフォームの穴をつくような運用をしはじめてしまうと、ブラックハットないたちごっこに入り込むことになります。
重要なことはエボークトセットに入ること
書籍「確率思考の戦略論」に詳しく書かれていますが、消費者が購入や申込をするときに頭に思い浮かべる商品リストに自社が入ることが重要です。
コンビニで水を買うときにクリスタルガイザーやボルビックなど6種類の商品が並んでいたとして、僕が手に取る商品は3種類のうちのいずれかです。
なんとなく「いろはす」「南アルプスの天然水」「ボルビック」のいずれかを手に取ります。そのうちのどれを取るかは”気分(と思い込んでいるもの)”です。
エビアン、クリスタルガイザー、FIJIあたりは選択肢に入りません。
「この選択肢に入ること」=「エボークトセットに入ること」であり、マーケッターの最重要課題です。
エボークトセットに入ることができれば、獲得数は伸びますし、CPAは下がります。
獲得数、CPAは「エボークトセットに入って、そのなかでさらに選ばれた」ことの結果で現れる数字です。
Webマーケティングの話に戻すと
エボークトセットに入れているかどうかを測るためにはNPS等のアンケートをすることがほとんどでしょう。Google広告のCTRやCVR、アフィリエイト広告の掲載メディア数やクリック数ではよくわかりません。
Webマーケティングの領域だけで考えると、エボークトセットを意識する機会はほぼありません。
Webマーケティングでエボークトセットを指標化するとしたら、ブランドクエリ(商品名クエリ)の検索ボリュームでしょう。
検索ボリュームを測るためには、Google広告でブランドクエリでの表示を最大化させておいてインプレッション数やクリック数で追いかけたり、Google Analyticsで追いかけたり、少し期間を長めに捉えてグーグルトレンドで追いかけることも良いでしょう。
しかし、これをKPIに設定しているケースは多くありません。多くの場合は獲得件数とCPAです。
エボークトセットが重要であることをハラオチできれば視界が広がる
「エボークトセットに入ることが重要である」と認識すると、「エボークトセットに入るためには、Web含め、消費者との接点をどう設計すればいいか。どんな強みを製品に持てばいいのか」と、オフライン含めたマーケティング、さらには製品開発にも手を伸ばす必要が出てきます。
製品開発にも手を伸ばすと、マーケティング部署とプロダクト部署の組織連携の問題、セールス部署との連携、商品戦略の問題と課題がより広い視点で見えてきます。
これまでの経験上、CVRを向上させるために一番効いた打ち手は「商品を変えること」です。LPOでも広告見直しでもありません。
Webマーケティングでの細かい調整ももちろん重要です。その調整がうまくできれば、10%、20%という事業成長を作ることができます。
でも、解決策はそれだけではなく、商品を変えることにもWebマーケッターが手を出すべきです。
特に機械学習の技術がどんどん進み、誰でも一定の質での運用ができるようになり、Webマーケティングでの運用差別化は難しくなっていっています。
なんとなく先端技術に近い立ち位置にいるWebマーケティング職種ですが、機械に多くの仕事が奪われるのはWebマーケッターかもしれません。
今の自分のKPIが正しいのかを疑い、「エボークトセットに入れること」をKPIに持つことがおすすめです。